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脱炭素化の進展度および課題: 2030年から2050年にかけた新興代替燃料
前回のブログ投稿では、橋渡し燃料に光を当て、IMO脱炭素化目標への短期的および中期的な準拠に関するメンバーの考えを共有し、バイオ燃料と液化天然ガス (LNG) の課題とメリットを探りました。
この第4回目の投稿では2022年に実施された代替燃料に関するアンケートの結果を検証し、2030年やその先2050年に向けて、さらに一歩進んで海運業界の脱炭素化への歩みの中で大きく取り上げられる可能性のある新興代替燃料に注目していきます。
国際海事機関(IMO)の2030年及び2050年に向けたGHG排出削減目標
IMOは国際海運分野における壮大な目標を掲げています。IMO-2030では、2008年レベルと比較して、2050年までに70%の削減実現を目指して引き続き努力しつつ、2030年までに炭素強度 (輸送量あたりのCO2排出量)を40%以上削減することを目標としています。IMO-2050では、年間の温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までに最低50%削減し、今世紀末までに段階的に完全廃止へと目標を定めています。これらの目標はさらに厳しくなる可能性があり、2023年に予定されている戦略見直しでは、このネットゼロへのゴールが2050年まで前倒しされることが予想されます。
最新の規制およびMARPOL条約附属書VIの改正に関する詳細については、 「Looking to 2023」 ブログ投稿を参照してください
新興代替燃料の調査
変化を続ける社会的背景は、海運業界に対して脱炭素化への道を推進するよう圧力をかけ続けています。ネットゼロへの時間的尺度が前倒しになる可能性があるため、船主と運航者は迅速に行動に移し、短期および中期での目標を超えた長期的な解決策を模索しなければなりません
2022年に実施された代替燃料に関するアンケートでは、IMO-2050の目標達成に関してはアンモニアがメンバーの考えの中心となっていることが明らかになりました。では、これらの新興代替燃料のいずれかを採用することを選択する必要がある場合、各燃料がどのようなメリットを提供し、また船主と運航者が直面する可能性のある課題とは何でしょうか?
メタノール
メタノール(CH3OH)は一般的に輸送される化学品の1つで、一般的には天然ガスや石炭を出発原料とした炭素から生成されます。しかしながら、炭素は、食用作物、農業廃棄物、森林廃棄物、使用済み食用油、その他の廃棄物などの「バイオマス」を含むさまざまな再生可能資源から調達することもでき、メタノールがグリーン認定される要因となっています。
規制の観点からは、メチルアルコールやエチルアルコールを燃料として使用する船舶のIMO暫定ガイドライン (MSC.1/Circ.1621) は、低引火点燃料を使用する船舶の IGFコード (国際ガス燃料船安全コード)とともに、海洋燃料としてのメタノールの適用に関する詳細な目標に基づいた規範的要件を提供しています。
メタノールには以下のような長所があります。
- 周囲温度で液体の状態の場合、加熱または冷却する必要はなし。
- 極低温燃料より保管と取扱いが容易。
- 既存エンジンを従来の燃料からメタノールに変換することが可能。
- 既存の保管およびバンカリング施設へは若干の変更のみ。
- 広く利用され、よく理解されており、いくつかの港湾ではバンカリング用に実績あり。
- 水溶性かつ生分解性であり、流出した場合の環境への影響が少ない。
- 水素やアンモニアよりもエネルギー密度が高い。
- 低レベルの硫黄酸化物(SOx)、亜酸化窒素(NOx)、粒子状物質を含むクリーンな燃焼燃料。
しかしながら、同時に多くの課題を抱えています。
- 生産は現在も主に天然ガス(灰色メタノール)または石炭(茶色メタノール)の処理によって行われており、CO2排出量の削減に関しては限界あり。
メタノールがバイオマスなどの再生可能資源を使用して生産される場合、またその生産に使用される電力が再生可能エネルギーから得られる場合のみグリーンメタノールと見なされる。 - 従来の燃料油よりも低いエネルギー密度。
- 燃料体積が燃料油の2.5倍であるため、より大きな貯蔵タンクおよび/またはより頻繁なバンカリングが必要。
- 引火点が60°Cを大幅に下回ると火災の危険性があり、取り扱いや保管の際には特別な防火対策が必要。
- 経口吸入や経口摂取、または皮膚に接触した際の毒性。
- 腐食リスクの増加。大容量の燃料タンクとは別に、機関室への潜在的な流出を防ぐための追加コファダムが必要。
アンモニア
通常、アンモニア (NH3) は炭化水素燃料から水素を抽出し、それを液化空気から抽出された窒素と結合することによって生成されます。周囲条件下では、特徴的な刺激臭のある無色の気体です。
本質的に、アンモニアは水素キャリアですが、水素と比較すると、エネルギー密度と液化温度の点でアンモニアの保管はより実用的です
現在は天然ガスから生産されていますが、排出量を削減するための炭素回収 (ブルーアンモニア)、または再生可能資源からの生産 (グリーンアンモニア) に対する可能性があります。
アンモニアには以下の長所があります:
- アンモニアには炭素分子が含まれていないため、燃焼中にCO2 の排出はなし。
- 転換プロセスにグリーン水素と再生可能エネルギーを使用した「グリーン」生産が可能。ただし、このプロセスはコスト面でマイナスの影響を与える可能性あり。
- 現在、化学産業向けに大量に生産されており、既存のインフラを使用して普及可能。
- 一般的に貨物として輸送されるため、取り扱いと輸送に関する問題はすでに把握済み。
- 水素やLNGに比べて、アンモニアは-33℃前後で保管されるため温度的に扱いが容易。
- 他の燃料に比べて可燃範囲が比較的狭いため、火災のリスクが低い。
ただし、以下のような様々な課題も抱えます:
- 毒性が高い。アンモニアは非常に水に溶けやすく、濃度が非常に低い場合でも体液 (汗、涙、唾液) に吸収され、重度の化学熱傷を引き起こす可能性があるため、アンモニア燃料を使用するためには追加の安全システムが必要。
- 毒性以外にも、アンモニアは銅、真鍮、亜鉛などの特定の金属やさまざまな合金の腐食リスクを高める。
- アンモニアは一般的に貨物として運ばれますが、燃料としての開発はまだ初期段階にあり、規制の枠組みは依然として策定中。現在、IGFコードはアンモニアのような毒性の高い燃料を扱う規範的要件を提供していない。
- アンモニアの体積効率とエネルギー密度が低いため、船上でより大きな貯蔵容量が必要。燃料用スペースの追加には、船舶のサイズを大きくして貨物スペースを減らすか、より頻繁な燃料給油が必要に。
- アンモニアは揮発性が高く熱増加によりボイルオフガス(BOG)を生成するため、管理をしない場合タンク内の圧力が上昇するので、アンモニアが冷蔵状態で保管されている場合にはタンクは温度や圧力を制御するように設計する必要がある。低温での貯蔵にはエネルギー入力が必要。
- アンモニアは他の燃料よりもはるかにゆっくりと燃焼し、従来の燃料油よりも自然発火温度は高い。そのため、一度アンモニアの燃焼が始まった後の維持が他の燃料よりも困難に。燃焼を高めるためにイニシエーター/イグナイター(燃焼促進剤)が必要となるため、エンジン出力を上げにくくなる場合あり。
- アンモニアはカーボンフリー燃料であるものの窒素が含まれているため、燃焼すると窒素酸化物(NOx)と亜酸化窒素(N2O)を排出。N2Oの排出はCO2の約300倍の強い温室効果。
以前のブログでも強調しましたが、メンバーはメタノール、アンモニア、その他の潜在的な代替燃料を選択するかどうかに関係なく、いくつかの重要な要因を考慮する必要があります。
パートナーや同業者との密接な連携と同じく、船上および陸上での船員に向けた教育訓練が不可欠です。海運業界は昔から情報の共有に消極的で、明確さや方向性が欠けていることで惰性が習慣化していました。
このような事態に対処するためにも、今後特に状況が厳しくなることが予測される中で、メンバーは関係各方面にメリットとなるイノベーション、洞察、アドバイスを共有する必要があります。
スタンダードクラブからのサポート
当クラブは、IMO目標に沿って、より環境に優しいエネルギーへの安全で持続可能な移行の成功を実現するために、メンバーと世界中の船主のサポートに尽力しており、
このサポートを通して、正しい情報に基づく選択および決定を行うのに必要なあらゆる情報をメンバーとブローカーに提供できるよう目指しています。
新興代替燃料および橋渡し燃料、エネルギー効率の高い技術に関する詳細については、 代替燃料専用ウェブページ をご覧ください。記事、業界の専門知識、ビデオ、ポッドキャスト、イベント、ウェビナーなどに加え、豊富な代替燃料情報、アドバイス、サポートツールにもアクセスできます。また代替燃料分野に関する質問は、豊富な専門的知識や経験を誇るクラブの担当チームまでお気軽にお問い合わせください。
カテゴリー: Alternative Fuels