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記事:Rock Advertising 対 Charles Lim Teng Siangか– NOM(口頭修正禁止)なのかそうでないのか - シンガポール控訴院が、口頭修正禁止条項に関して英国最高裁判所と異なる見解を示す
Rock Advertising Limited (以下Rock) とMWB Business Exchange Centres Limited (以下MWB)[1] (Rock Advertising)との裁判において、英国最高裁判所のSumption裁判官が下した判決は、英国の法律関係者の多くが物議を醸すものになると考えています。
Rock Advertising Limited (Rock) とMWB Business Exchange Centres Limited (MWB)[1] (Rock Advertising)との裁判において、英国最高裁判所のSumption裁判官が下した判決は、英国の法律関係者の多くが物議を醸すものになると考えています。 英国高等裁判所は、口頭修正禁止(NOM)条項は、まさにその言葉通りの意味をもち、口頭での修正は許されないと判断したのです。 Charles Lim Teng SiangとHong Choon Hou[2] (Teng Siang)の裁判においては、シンガポール控訴院は 反対の判決を出しました。証明された場合には口頭での修正が認められます。
NOMは「ボイラープレート条項」として知られ、契約の口頭での変更を防ぐことを目的としており、変更は書面に記録され、条項によって求められるその他全ての基準を満たす必要があります。
英国最高裁の判決とその理由
MWBはオフィスエリアを運営していたところにRockが12ヶ月間の固定契約で賃貸契約を結びました。 契約書にはNOMが記載されていました。Rockの支払いが滞納するようになり、Rockの単独取締役は電話でMWBの与信管理担当と支払いスケジュールの修正に合意しました。 Rockは、契約の変更が合意されたと主張したのですが、MWBはその見解に同意しませんでした。 最高裁は、Rockの見解を支持しましたが、他のコモンローの法域とは異なるこの判決は英国の法曹界の多くの人々を驚かせました。
この判例前は、NOMは、口頭での変更が合意されたかどうかの事実関係の中の1つの要素であると考えられていました。 それがもはや当てはまりません。 この判決を受けて、「私的自治」を強調する声が聞かれました。これは、両当事者は誰とどのような条件で契約したいか自由に決めることができるという原則です。 この原則では、両当事者が希望する場合、後日口頭で契約を変更することに同意することも可能です。 Rock Advertisingの判決を受けた現在の英国法では、契約書にNOMが含まれている場合、これはもはや不可能です。 おそらく、Sumption裁判官は、他の3人の最高裁判事が同意したように、契約上の確実性の方が私的自治の意味についての概念的な議論点よりも重要であると判断したとみられます。 結局、両当事者は契約を修正することができますが、それは契約で合意された方法、つまり書面で行わなければなりません。
裁判所は、それから禁反言の問題を検討しました。 簡単に説明すると、禁反言とは、一方の当事者が言葉にするかもしくは行為を通して以前は依拠しないとしていた法的権利を、現在その権利をもう一方の当事者に行使させないための法原則です。 禁反言が適用されるためには、その変更が非公式であるにもかかわらず有効であることを明確に示す言葉や行為が必要であり、単なる非公式の約束では十分ではないと判断しました。 さらに、禁反言は、NOMを裏口から回避する手段としては認められていません
Teng Sianの裁判では、シンガポール控訴院が全く異なる判断を下しました。 これは大きな意味を持ちますが、その理由としては、同じコモンローの国である英国とシンガポールにおいては、法の問題の判断は分かれるのではなく共通の結論に行き着く傾向にあるからです。 NOMに関しては、英国法が分岐点となっており、他のコモンローの管轄区域ではTeng Siangで示された見解を共有する傾向にあります。
シンガポール控訴裁判所の判決とその理由
控訴人であるTeng Siangは、被控訴人に株式を売却するための売買契約(以下「SPA」)を締結しました。 契約完了日は過ぎましたが、取引は成立しませんでした。約3年半後、控訴人は被控訴人に対し、SPA違反を理由に損害賠償を請求しました。
高等裁判所では、SPAは当事者間の電話での合意により口頭で取り消されたとの主張で被告側が勝訴しました。しかし、NOMについては論争中ほとんど言及されず、むしろ見過ごされていたようです。しかし、控訴審では、控訴人は、NOMに依拠したのです。 SPAには以下の条項が含まれていました:
条項の変更
本契約またはそのいずれかの条項の変更、補足、削除、または置換は、各当事者が署名した書面によるものでない限り、効力を持たないものとする。
したがって、控訴人らは、仮に口頭で撤回したとしても、それは無効であると主張しました。
控訴院はこれに同意せず、控訴を棄却しました。 条項は「撤回」には適用されませんでした。これは条項の文言から自明のことであり、条項は、SPAが当初から変更されても有効であると想定していました。
厳密に言えば、この条項が適用されないと判断した以上、裁判所はNOM条項の法律的効果について議論する必要はありませんでした。 しかし、NOM条項の合法性に関する意見を聴取するための特別な大法廷が召集され、暫定的な見解を伝えるべきだと判断しました。
裁判所は、当事者が契約にNOM条項を含める理由として、Rock Advertising事件で最高裁が提示した商業上の正当な理由をいくつか挙げました。
"(a)非公式な手段、例えば
略式判決を防ぐために口頭修正の被疑の抗弁を提起することにより書面による合意を損なう試みを防止する。;
(b) 口頭での議論は証明が難しく、誤解を生みやすいため、
条件や変更の有無の確実性を確保する;および
(c) そのような形式的行為をとることで、企業が内部規則で監督することを容易にして、 従業員が変更に同意することを制限する[3]”
そして、NOM条項の効果についての様々な考え方のアプローチを検証しました。 集められた意見の要点は、どの時点で当事者がNOM条項から逸脱することを意図していたことが必然的に暗示されるかについて、幅広い試問が適用されるべきであるというものでした。
「試問は、両当事者が口頭での変更に合意した時点で、実際に質問を検討したかに関わらず、質問に関心をもっており必然的にNOM条項から離れることに合意していたかどうかであるべきです。」
Rock Advertisingの裁判では、NOM条項を支持する理由として、口頭での変更を認めることにより、両当事者の意図を覆すことができた、すなわち、口頭での変更によって契約を変更することはできないという当事者の意図を覆すことができたことが挙げられています。 シンガポール控訴院は、Rock Advertisingルールは、両当事者の意図が契約時に固定されていなければならないことを意味し、時間の経過とともに両当事者の意図が変わる可能性があるという事実を考慮しなかったため、口頭での修正を認めても当事者の意図を覆すことはできないと判断しました。 両当事者は、自身の契約の締結責任者として、契約条件を変更する自治権を持つべきです。 裁判所は、個々の当事者の自治権が契約に拘束される可能性がある一方で、当事者が共同でこの行動に同意している限り、当事者は自らの契約を変更する集団的な力を保持していると指摘しています。事実上、Rock Advertisingの立場は、契約にNOMが含まれており、両当事者が一連の契約条件に合意している場合、両当事者がその変更を書面に記載しない限り、その契約条件を変更することに合意できないというものです。 シンガポール控訴院は、その点に同意せず、Cardozo J.のよく知られた格言を引用しました。 「契約を結んだ者は、それを取り消すことができる」[4].
裁判所は、Rock Advertisingは、後日になって当事者が以前に合意した契約を口頭で変更するという意図が合意されたという事実よりも、契約そのものの確実性を優先しているように捉えられると結論づけました。 Teng Singの裁判では、裁判所は、NOMの問題を検討する必要があるのは、口頭での変更が証明された後だけであると指摘しています。 この時点でNOMは法的効力を失いますが、それは、NOMは両当事者が合同で決定したものだからであり、これは裁判所が指摘したように、私的自治の原則です。
判決では、NOM条項は書面による合意がない場合には変更がきかない、という反駁できる推定をもたらすとしています。 NOMを含む契約の口頭での変更を裁判所が有効にするには、説得力のある証拠が必要です。 この判例では、そのような説得力のある証拠がありました。 その内容とは、SPAの契約完了日が過ぎ、その後の3年半の間に控訴人が何もしなかったことについて、納得のいく説明がなかったことです。 裁判所が口頭での撤回を裏付けると判断した同時に生じた行為や、株式自体に関する発表に対する被告人側の一部の行動があり、被告人は株式取引に疑問を感じていたのです。
禁反言の概念を検討するにあたり、裁判所は、ほとんどの場合、口頭での合意が証明されると、禁反言も証明される可能性が高いと認識していました。 それは大半の場合、両当事者は契約上の義務を履行する際、口頭での変更に基づき行動するはずだからです。
最後に、シンガポールの法律では、NOMは口頭合意により変更できるように思われますが、裁判所が提示した見解は付随的意見であることを忘れてはなりません。 付随的意見とは、判事が提起した意見であるもののその裁判の判決に必要ではなく、したがって将来の裁判においても拘束力を持たないものです。したがって、可能性は低いですが、この点が正面から争われる裁判が控訴裁判所に持ち込まれた場合、この点は変更される可能性があります。
メンバーの皆様方がここから学ぶことができる教訓は何でしょうか?
英国法の下では、契約書にNOMが含まれている場合、契約条件はその条項に従ってのみ変更でき、変更は書面で行われなければなりません。 複雑で長い交渉の結果まとまった契約を、事実上、地位の低い社員や、たとえ地位の高い社員であっても「偶然に」契約を変更できないうえ、「瞬間的な感情に左右される」ような場面でも、経営陣の監督が必要となる書面を通してでない限り変更は実現しないので、このメリットは明らかです。
シンガポール法の下では、これが全く逆に捉えられます。 もし問題になったときに、当事者の一方が口頭変更が合意されていたと証明できれば、Rock Advertisingの裁判のように、従業員が契約の相手方と契約条件の変更を一方的に合意したことになり、他の従業員は問題になるまでその変更について知らない事もあり得ます。 しかし、プラスの側面では、迅速な決断が必要でかつ両当事者が完全に状況把握している状況では、口頭変更が合意されることで時間と費用の両方を節約することにつながるわけです。
英国法の下では、契約にNOMが含まれている場合、いかなる変更も当事者間で書面により合意することが不可欠です。 契約に関する法律がシンガポール法に基く場合、必須ではないとはいえ、複雑で費用のかかる紛争を避けるために、契約上の変更は権限のある関係者が書面を通して合意するようにすることが望ましい習慣です。
[1] (Rock Advertising Limited v MWB Business Exchange Centres Limited [2018] 4 All ER 21
[2] Charles Lim Teng Siang v Hong Choon Hau [2021] SGCA 43
[3] (Rock Advertising Limited v MWB Business Exchange Centres Limited [2018] 4 All ER 21 [12]
[4] Beatty v Guggenheim Exploration Co [1919] 225 NY 380 at 387 to 388
カテゴリー: Defence