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記事:乗組員交代に関する非常事態への対処と船員の人権について
国連は1948年に「世界人権宣言(UDHR)」を宣言し、すべての民族、すべての国の共通の達成基準としています。
国連は1948年に「世界人権宣言(UDHR)」を宣言し、すべての民族、すべての国の共通の達成基準としています。2021年の今、これらの基本的権利を維持するのに世界が苦戦しているというのは考え難いことです。
WHOの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ダッシュボード の数字によれば、この感染症の世界的大流行により、1億7,000万人以上の感染例が確認され、350万人以上が死亡するなど、世界中が大きな打撃を受けています。これら未曾有の事態において、世界は、人々がロックダウンの渦中にある中で、食料、水、電力、医療、インターネットといった必需品へのアクセスを維持できるように最前線で体を張る「エッセンシャル・ワーカー」の存在を認識するようになりました。それでも、これらの必需品を人々に届けるサプライチェーンの最後のリンクであり、自分の目に留まる範囲で働いている主要ワーカーだけを認識する傾向があります。製品やサービスが届くのは目にしていますが、どのような経路を通って実現に至っているかを理解していないことがあるのです。
地球に暮らすものとして、世界のサプライチェーンが止まらずに、スーパーマーケットに在庫があり、燃料タンクを満タンにすることができ、必要な医療品や医薬品が世界の最果てまで届き、eコマースプラットフォームが配送を行えるといったところを実現させるため、船員が果たしている重要な役割に感謝の目を向ける必要があります。IMOの記事「Crew changes: A humanitarian, safety and economic crisis」からの最新の報告によれば、2021年3月現在で、 20万人以上の船員が足止めを食っており、勤務開始や終了交代を待っています。これらの船員は、各国が新型コロナウイルス感染拡大を管理するため制限を課したことで、身体および精神的健康の権利、家族生活の謳歌、移動の自由など、人権がもたらす基本的な「快適さ」を奪われているのです。
コロナウイルス危機以前当時から、航海中は家族や友人から離れて、無休の忙しい生活を何ヶ月も続けなければならず、長い休みや休暇もありません。悲しいことに、昨今では状況がさらに悪化して、船員は帰国あるいは医療を受けることにもに苦労しています。契約満了後に帰国するという基本的なスケジュールでさえ、かなりの計画とサポート、そして運を必要とする困難なタスクとなっています。
船員は、海事、ひいては世界貿易の生命線であり、船員が雇用に関する基本的な権利を行使できるよう、必要な保護、ケア、支援を提供することが不可欠です。その結果、世界貿易と世界貿易が支える必需品が、持続され、繁栄し、全方面に対して改善をもたらすことができるのです。
しかし、残念なことに、新型コロナウイルスの世界的流行の間に、それまでの保護やケア、支援が損なわれたり、忘れ去られたりすることが多くあり、現在直面している未曾有の事態に適応した新たな保護手段が実施されることはほとんどありませんでした。例えば、IMO加盟国174カ国のうち、船員を 「主要ワーカー」と指定 して、以下の要素に対応しているのはわずか60カ国だけです:
1. 乗組員の交代、医療や旅行へのアクセスを容易にする
2. 新型コロナウイルスの世界的流行の結果、船員が直面する課題に対処し、グローバルなサプライチェーンを支援する
3. 海事労働問題に対処する
スタンダードクラブは、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、国連人権高等弁務官事務所(UN Human Rights)、ILO、IMOの共同イニシアチブである「人権デュー・ディリジェンス・ツール」が国連から発表されたことを歓迎し、全面的に支持します。これらの組織は、乗組員交代の制限により船員に生じる人権上の悪影響を特定、防止、緩和、対処するための人権デュー・ディリジェンスを企業が行うことを提唱し、船員の権利の尊重を確保するよう政府や海運業者にはたらきかけています。
このツールは、自主的な行動、実践的な手順、企業向けのガイダンスを提供することで、用船者や荷主を含む企業が、新型コロナウイルスに関連する乗組員交代の非常事態の間、船員に対する責任を果たすことへの支援を目的としています。ツールは、三つのパートで構成されており、それぞれのパートでは、企業が取るべき人権デューディリジェンスのチェックリストが用意されており、乗組員交代に関する継続的な非常事態に対応しています。ツールには、新型コロナウイルスによる船員の権利に対する主要なリスクの概要と、企業とそのパートナーが責任を果たし、船員の権利確保を助長するために取ることのできる集団的行動の例が含まれています。
IMOは、さらにILO、ICS、ITFなどの他の組織と協力して、個々の案件の解決を支援する 船員危機対応チーム(SCAT) を設立しました。SCATは、各国政府、NGO、労働組合、関連団体の代表者と連絡を取り、個々の船員の案件について解決策を探ります。
スタンダードクラブは、 ネプチューン宣言の署名者の一人として、乗組員交代にまつわえる非常事態を解決することが共通の責任であることを認識し、以下に示す宣言の4つの重要な行動の実施を促しています。
- 船員を主要ワーカーとして認識し、新型コロナウイルスワクチンに優先的にアクセスできるようにする
- 既存のベストプラクティスに基づいた規範となる健康プロトコルの確立と実施
- 乗組員交代を容易にするための、海運会社と用船者の間の協力関係の強化
- 船員向けの主要な海事拠点間における航空機を使った連絡経路の確保。
当クラブでは、乗組員の心身の健康の重要性を常に認識しており、最も明確な方法としては受賞歴のある書籍「The Human Element: A Guide to Human Behaviour」、または、「Being Human in Safety-Critical Organisations」や「Behaving Safely: A practical guide for risky work」の出版を通じて、メンバーの皆様方に数年前から様々な手段を通してこれを奨励してきました。
これらの出版物は、主に船舶の安全航行のためのヒューマンインターフェースを取り上げています。安全な船を考える時に、チームワーク、反発力、指導支援やコミュニケーションといった人的要因がカギとなってきます。個人の心身の健康を抜きにして、チームとして成功することは考えられません。
当クラブは、船員の心身の健康に特化した数多くのプロジェクトに参加しています。身体的、精神的、社会的な健康に関する様々な側面に焦点を当てた、船員の健康を考えるポスターキャンペーンを2019年11月にリリースしました。スタンダードクラブは、ISWANやMission to Seafarersなどの業界パートナーと協力して、数多くのウェビナーを開催しています。これらは Standard Club Youtube channelでご覧いただけます。当クラブの「標準的な安全性:船員の心身の健康」編では、健康面の向上に役立つ様々なトピックを取り上げています。当クラブは、 ミッション・トゥー・シーフェアラーズの新聞The Sea と船員幸福度指数のスポンサーです。
今日の船員は、ストレスと疲労を抱えています。肉体労働というよりも、いつになったら無事に帰国できるのかという不安や、多くの国で新型コロナウイルスへの感染が記録的なスピードで拡大している中で、家族の安全への気遣いが大きいのです。
今こそ、船員に声をかけ、気持ちを理解して支援を行い、ワクチン接種や医療ケアを受けられるようにして、帰国がいつになる のかというストレスから解放することが重要です。
当クラブは、船員の権利が侵害されることなく、心が満たされた船員によるケアと環視の目により世界貿易が安全に行われるよう、この非常事態に際し一丸となって船員を支援し保護することを、すべての関係各方面に勧奨しています。
国際P&Iグループ (IG) は、メンバーの皆様方の乗組員交代計画を支援するために、様々な港での新型コロナウイルス規制に関する情報を掲載した専用ウェブページを用意しています。ICSおよび他の業界団体は、船上での新型コロナウイルス管理やワクチン接種に関するガイダンスを作成しています。
詳細については、船員の心身の健康と新型コロナウイルスに関する当クラブの専用ウェブページをご覧になるか、普段のクラブ連絡先にご連絡ください。
カテゴリー: COVID-19